「なんであの人、いつもため口なんだろう…」
職場で、そんな違和感を抱えている方は少なくないのではないでしょうか?
特に、目上の人や先輩に対してもため口が目立つ若手社員の増加に、マネジメント層から悩みの声が聞かれます。
今回は、フィットネスジムのベテラントレーナーである中川さんと、ライフ心理学アドバイザーの日向さんとの会話を通じて、「ため口」の背景にある心理と、建設的な対応方法について考えていきましょう。
日常のワンシーンに潜む心理学の知恵が、きっと皆さんの職場のコミュニケーションにも役立つはずです。
中川さん「はい、次は肩甲骨を意識して、こちらの方向にゆっくりと…」
日向さん「ああ、気持ちいい。この動きって、私いつも自分では曖昧になっちゃうんですよね」
中川さん「姿勢は大事ですからね。週2回来ていただいてるおかげで、日向さんの可動域、だいぶ良くなってきましたよ」
日向さん「ありがとうございます。中川さんに担当ついてもらってから、体の変化がよくわかるんです」
中川さん「あ、はい…ところで日向さん。ちょっと相談してもいいですか?」
日向さん「もちろんです。どうぞ」
中川さん「実は、新人のトレーナーのことで悩んでいて…」
日向さん「ああ、先週から来てる笹原くんですか?」
中川さん「はい。彼、技術はすごくいいんです。お客様の体の状態を見る目も確かで。でも…」
日向さん「でも?」
中川さん「言葉遣いが気になって。先輩の私にもタメ口なんです。『あ、中川さん、これやっといたから』とか」
日向さん「へえ。中川さんは、それが気になるんですね」
中川さん「はい…注意した方がいいのかな、と。指導係として」
日向さん「なるほど。では、少し整理してみましょうか。まず、笹原くんは仕事自体はできる。でも言葉遣いが気になる」
中川さん「はい。お客様には敬語で話せているんですけど…」
日向さん「ほう、それは興味深いですね。じゃあ、接客の基本は心得てるわけですね」
中川さん「そうなんです。だから余計に…」
日向さん「では、次のストレッチに移動する間に、具体的にどんな場面で気になるか、教えていただけますか?」
中川さん「はい。例えば昨日も、『中川さん、このプログラム、俺が組んどいたんで確認しといて』って」
日向さん「なるほど。笹原くんの声のトーンや表情はどんな感じでした?」
中川さん「明るくて、むしろ親しみやすい感じというか…」
日向さん「ふむふむ。じゃあ、敵意や反抗的な態度は感じられない?」
中川さん「そうですね…というか、むしろ懐いてくれてる感じはするんです」
日向さん「はい、大事なポイントが見えてきましたね。心理学的に見ると、ため口には大きく分けて二つのパターンがあるんです」
中川さん「二つ、ですか?」
日向さん「はい。一つは無意識に出てしまう場合。もう一つは、親近感を表現したい欲求からくるもの」
中川さん「へえ…」
日向さん「笹原くんの場合、お客様には敬語が使えているということは、TPOの区別はついているんですよね。だとすると…」
中川さん「親近感の表現、ということでしょうか」
日向さん「可能性が高いですね。特に、中川さんのような信頼できる先輩に対して」
中川さん「でも、だとしても、やっぱり直した方が…」
日向さん「その前に、中川さんご自身のことも考えてみましょう。なぜ気になるのかな、と」
中川さん「そうですね…多分、私自身が年上の方への言葉遣いにはすごく気を使うタイプだからかも」
日向さん「なるほど。自分の価値観を基準にしてしまいがちですよね。でも、コミュニケーションスタイルは人それぞれ違うんです」
中川さん「確かに…」
日向さん「もし笹原くんが、仕事はできて、態度も好意的なら、この『ため口』は彼なりの関係性の作り方かもしれません」
中川さん「そう考えると…確かに、彼なりの親しみの表現なのかも」
日向さん「はい。ただし、職場全体のこともありますからね。次に、どうアプローチするかを考えましょう」
中川さん「お願いします」
日向さん「まず、笹原くんとの1対1の機会を作ってみてはどうでしょう?」
中川さん「はい」
日向さん「そこで、『仕事ぶりはすごく良くて心強い。これからもっと活躍してほしい』という前向きなメッセージを伝える。その上で…」
中川さん「その上で?」
日向さん「『ただ、職場ではみんなが見ている。後輩の見本になってほしいから、先輩との話し方にも気を配ってくれるとうれしい』といった感じで」
中川さん「なるほど。否定から入らないんですね」
日向さん「そうです。彼の良いところをしっかり認めた上で、お願いとして伝える。そうすれば、きっと受け止めてくれるはずです」
中川さん「確かに…それなら、関係性も壊さずに済みそうです」
日向さん「はい。心理学では、『人は認められてから、変化する』という基本原則があるんです」
中川さん「へえ、そうなんですね…あ、もうストレッチの時間が」
日向さん「あ、本当ですね。でも、なんだか肩の力が抜けた感じがしませんか?」
中川さん「はい。心のストレッチもできた気分です(笑)」
日向さん「良かった。来週また様子を聞かせてくださいね」
中川さん「ありがとうございます。心理学の視点って、本当に勉強になります」
日向さん「いえいえ。でも、心理学って面白いでしょう?日常のちょっとした悩みも、視点を変えると解決のヒントが見えてくる」
中川さん「本当にそうですね。…では、最後に首のストレッチをしましょうか」
日向さん「はい。お願いします」
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今回の学び 相手の「ため口」は、無礼さではなく親愛の情や無意識の表れである可能性があります。注意をする際は、まず相手の仕事ぶりや良い点を認めることで心理的な障壁を下げ、その上で要望を伝える「サンドイッチ話法」が、関係を壊さずに改善を促す鍵となります。 |



