防災の心理学

防災の重要性は誰もが認識しています。

でも、なぜか具体的な備えとなると、つい後回しにしてしまう。

そんな人間心理の不思議に、心理学の視点からアプローチする新しい防災セミナーの企画が持ち上がりました。

市役所防災課の金子さんと、ライフ心理学アドバイザーの日向さんによる、打ち合わせの一コマをお届けします。

日向さん「金子さん、今日はお忙しい中、セミナーの打ち合わせにお時間いただき、ありがとうございます」

 

金子さん「いいえ、こちらこそ。防災セミナーに心理学の視点を取り入れるっていう日向さんの提案、とても面白いと思います。私も市役所の防災課に異動してきて2年になりますが、『分かっているけど備えない』っていう市民の方が多くて…」

 

日向さん「ああ、それって正常性バイアスという心理的な…あ、すみません。また私、すぐに専門用語を持ち出してしまって」

 

金子さん「いえいえ、そういう専門的な解説、むしろ欲しいんです。私は過去に被災した経験があるので、体験は話せますが、なぜ人はそういう行動をとるのか、その理論的な説明ができなくて」

 

日向さん「被災されていたんですね…大変でしたね」

 

金子さん「ええ。だからこそ、防災の大切さを伝えたいんです。でも、ただ『危険だから備えましょう』っていうだけじゃ、なかなか響かなくて」

 

日向さん「そうですよね。心理学的に見ると、人は目の前にない危険を過小評価しがちなんです。…あ、またつい」

 

金子さん「いえ、むしろそういう話を聞きたいんです。今度のセミナー、日向さんにその心理学的な解説をしていただけませんか?私は実体験を話します」

 

日向さん「ええ、もちろん。でも、あまり理屈っぽくならないように気をつけます。私、つい熱くなって話し過ぎちゃうところがあるので」

 

金子さん「そんなに気を使わなくても大丈夫ですよ。むしろ、その熱意が伝わる方がいいと思います。…あ、ちょっとイメージですが、私が『まさか自分が被災するとは思っていなかった』という体験を話して、そこから日向さんに『なぜ人はそう考えてしまうのか』を説明していただく、というのはどうでしょう?」

 

日向さん「それ、いいですね!でも、一方的な説明にならないように、参加者の方にも『自分は大丈夫だと思っていた経験』を聞いてみるのはどうでしょうか」

 

金子さん「素晴らしいアイデアですね。そうすれば参加型になりますし」

 

日向さん「ありがとうございます。あと、『なぜ防災準備を先延ばしにしてしまうのか』という心理的メカニズムについても触れたいんですが…」

 

金子さん「それ、すごく大事だと思います。私たちの講座でも、『重要性は分かっているけど、なかなか行動に移せない』という声をよく聞きます」

 

日向さん「そうなんです。じつは先延ばしには、心理学的にいくつかの要因が…あ、またつい」

 

金子さん「(笑)大丈夫です、その説明、セミナーの時にじっくり聞かせてください」

 

日向さん「ありがとうございます。でも、理論的な話だけじゃなく、具体的な克服方法も提案したいんです。小さな一歩から始める方法とか」

 

金子さん「それいいですね。私からは、実際に市民の方が工夫されている例なども紹介できます」

 

日向さん「あ、それと、家族防災会議の進め方についても触れたいんですが、ここは私たちでロールプレイをやってみるのはどうでしょう?」

 

金子さん「面白そうですね!私が頑固な夫役をやりましょうか(笑)」

 

日向さん「(笑)そうですね。でも、私またつい話が長くなりそうで…」

 

金子さん「日向さん、本当に謙虚なんですね。でも、その専門知識があるからこそ、防災の新しいアプローチが見えてくると思うんです」

 

日向さん「ありがとうございます。金子さんのおかげで、少し自信が持てました」

 

金子さん「私こそ、心強い協力者が見つかって嬉しいです。次回のセミナー、きっと今までにない内容になりますよ」

 

日向さん「はい!市民の皆さんの防災意識が、少しでも行動に結びつくように頑張りましょう」

 

金子さん「そうですね。じゃあ、セミナーの細かい進行について、もう少し詰めていきましょうか」

 

日向さん「はい。あの、その前に一つ確認したいんですが…また私が熱くなり過ぎたら、さりげなく止めてもらえますか?」

 

金子さん「(笑)もちろんです。でも、その情熱、私は素敵だと思いますよ。防災も心理学も、人の命や暮らしを守ることに繋がりますものね」

 

 

今回の学び

「自分は大丈夫」と思い込む「正常性バイアス」や、面倒で後回しにする心理が防災行動を妨げます。人間のこうした心理特性を理解した上で、小さな一歩から備えを始めることが、自分と家族を守るための鍵となります。