価格の心理学

連日のようにニュースで取り上げられる「物価高」。

スーパーに買い物に行くたびに、ため息をついてしまう方も多いのではないでしょうか。

今回は、定年退職後に料理教室に通い始めた海野さんと、ライフ心理学アドバイザーの日向さんの対話をお届けします。

年金暮らしの中で物価上昇の波を肌で感じている海野さんの悩みに対し、日向さんが心理学の視点からアプローチします。

お金に対する私たちの心の動きを知ることで、物価高のストレスと上手に付き合い、日々の買い物を少しでも前向きに楽しむためのヒントを探っていきましょう。

海野さん「いやあ、今日の料理教室も楽しかったですね。日向さんの手際の良さ、いつも感心してしまいますよ」

 

日向さん「ありがとうございます、海野さん。海野さんも、包丁さばきが随分スムーズになりましたよね」

 

海野さん「ははは、日向さんにそう言ってもらえると自信がつくな。あ、褒められてないか。あはは、参った」

 

日向さん「…褒めてますよ。せっかくですから、今日のレシピ、忘れないうちに復習したいですね。あ、ここのスーパー、寄っていきませんか?」

 

海野さん「ええ、寄りましょう。でも最近、スーパーに来るのがちょっと億劫でしてね…」

 

日向さん「どうしてですか?」

 

海野さん「何を買うにも高くてね。定年退職して年金暮らしになってから、特売品ばかり探してしまって。昔はもっと買い物が楽しかったのになあ、と、ため息が出ちゃうんですよ」

 

日向さん「物価高、本当に実感しますよね。特売品を探すのは賢いことだと思いますけど、買い物が楽しくなくなってしまうのは少し寂しいですね」

 

海野さん「そうなんです。例えば、このキャベツ。前はもっと安かったのに、今はこんなにするのか、と、どうしても前の値段と比べてしまってね」

 

日向さん「(少し身を乗り出して)なるほど! 海野さん、それは心理学でいう『アンカリング効果』が働いているのかもしれませんよ」

 

海野さん「アンカリング効果?」

 

日向さん「はい。人が何かを判断するときに、最初に印象に残った数字や情報が『アンカー(錨)』となって、その後の判断に影響を与えてしまう心理のことです。海野さんの場合、『過去の安い値段』がアンカーになっていて、今の値段が過剰に高く、損をしているように感じてしまうんです」

 

海野さん「なるほど、あの頃の値段に心が縛られているわけですね。確かに、損をしたくないという気持ちは強いです」

 

日向さん「それも『損失回避』という心理なんですよ。人は『何かを得ること』よりも、『何かを失うこと』に対して、より強い心理的な抵抗を感じるんです。だから、少しでも高く買うと、強く『損をした』と感じてストレスになってしまうんです」

 

海野さん「損失回避…以前、値切る人の心理で教えてもらったのと同じですね。物価高のストレスにも関係しているとは」

 

日向さん「(目を輝かせて)そうなんです! そこで、このストレスを和らげるために『メンタルアカウンティング』、つまり『心の家計簿』という考え方を取り入れてみるのはどうでしょうか?」

 

海野さん「心の家計簿?」

 

日向さん「はい。私たちは心の中でお金を色分けしているんです。例えば、同じ1000円でも、生活費の1000円は惜しいけど、趣味の1000円はパッと使えたりしませんか? これを利用して、例えば『料理教室で習った美味しいものを作るための特別予算』を少しだけ設けてみるんです。すべてを『生活費』として節約しようとすると心が疲弊してしまいますが、自分にとって本当に価値のある支出とそうでない支出を見極めて、メリハリを持たせるんです。そうすると…」

 

海野さん「(感心したように)なるほど、なるほど」

 

日向さん「あ…(慌ててハッと我に返る)すみません! 私、またスーパーの真ん中で講義みたいに熱く語ってしまいました…」

 

海野さん「ははは、日向さんの話は面白いから大丈夫ですよ。なんだか、買い物の見方が変わりました」

 

日向さん「(少し照れながら)本当ですか? よかったです…」

 

海野さん「ええ。ただ安いものを探すだけじゃなくて、本当に価値を感じる美味しい食材には適正なお金を払って、他の部分で賢く節約しようと思います。そう考えたら、今日の料理の復習に使う食材を選ぶのが、なんだか楽しみになってきましたよ」

 

日向さん「それは素晴らしいですね! 心に余裕を持った買い物の仕方ができれば、日々の生活ももっと豊かになりますよね」

 

海野さん「本当にそうですね。心理学を知ると、経済のニュースや毎日の買い物も違って見えそうです。日向さんの知識は、本当に生活の役に立ちますね」

 

日向さん「ありがとうございます。もしもっと心理学に興味があれば、日本心理学普及協会の活動もぜひチェックしてみてくださいね。日常生活を豊かにするヒントがたくさんありますから」

 

海野さん「ええ、ぜひ見てみます。さて、まずは『特別予算』で美味しいお肉でも選びましょうか!」

 

 

今回の学び

日常のありふれた場面にこそ、心理学的な発見が隠れています。カラオケや料理、通勤といった身近な行動を観察し、独自の視点で「〇〇心理学」と名付けてみることで、生活を豊かにする新たな気づきやアイデアが得られるでしょう。

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