雨の日に傘を持って出かけたのに、雨が上がるとつい電車やお店に置き忘れてしまう…そんな「傘の忘れ物」に悩んだ経験はありませんか?
今回は、ライフ心理学アドバイザーの日向さんと、企業の広報部で働くキャリアウーマンの武藤さんが、一緒に通う料理教室の帰りに交わす会話をご紹介します。
なぜ私たちは無意識のうちに傘を手放してしまうのか。
その背景にある「記憶と注意のメカニズム」を心理学の視点から紐解き、日常のうっかりミスを防ぐヒントを探ります。
日向さん「今日の料理教室も楽しかったですね。あ、すっかり雨が上がってますよ」
武藤さん「本当ですね。行きはあんなに降っていたのに、すっかり晴れて…あ!」
日向さん「どうしました?」
武藤さん「あ! 教室の傘立てに、傘を忘れてきちゃいました…」
日向さん「あらら、そうだったんですね」
武藤さん「(肩を落として)私、仕事の資料やスケジュールは完璧に管理できるのに、なぜか傘だけは毎回忘れてしまうんです。本当に私ってだらしないのかなって、落ち込みます…」
日向さん「武藤さん、それは性格の問題じゃありませんよ。実は、脳の『ワーキングメモリ(作業記憶)』の限界が関係しているんです」
武藤さん「ワーキングメモリ…ですか?」
日向さん「はい。人が一度に処理できる情報量には限りがあるんです。雨が降っている間は『傘をさす』という必要性があるので、脳はしっかり傘の存在を意識しています。でも、雨が止むとその必要性がなくなりますよね」
武藤さん「確かに、雨が上がると傘のことはすっかり頭から抜けていました」
日向さん「そうなんです。その瞬間、武藤さんの優秀な脳は、明日の仕事の段取りや今日の夕飯のメニューなど、別の考え事にリソースを使い始めます。すると容量がいっぱいになって、傘の存在が意識から押し出されてしまうんですよ」
武藤さん「なるほど! だから、仕事の管理はできても傘は忘れてしまうんですね」
日向さん「(目を輝かせて)そう! さらに言うと、『文脈依存記憶』も影響していて、雨という文脈が失われると記憶を引き出しにくくなるんです! それに人間の脳は基本『省エネモード』で動きたがるから、無意識のうちに必要ない情報をカットしようとして…」
武藤さん「(微笑みながら聞いている)」
日向さん「(ハッとして)あ、ごめんなさい! 私、また聞かれてもないのに教えたがりなところが出ちゃって…」
武藤さん「ふふ、以前『締め切りギリギリの心理学』を教えていただいた時もそうでしたね。でも、すごく面白いので続けてください」
日向さん「(ホッとして)ありがとうございます。優しいですね。ええと、つまり、忘れてしまうのは脳の自然な仕組みなんです。だから、『しっかり覚えておこう』と自分の記憶力に頼るのは得策ではありません」
武藤さん「じゃあ、どうすれば傘を忘れないようになりますか?」
日向さん「ワーキングメモリに頼らない『物理的な仕組み作り』が有効です。例えば、傘から絶対に手を離さないルールにするとか、カバンの持ち手に傘を引っ掛けて荷物と一体化させるとか。そうすれば、脳の容量を使わずに済みます」
武藤さん「物理的に結びつけるんですね! 自分の性格がだらしないからじゃなくて、脳の仕組みだったと分かって、なんだか心が軽くなりました。その対策、さっそく試してみます!」
日向さん「ぜひやってみてくださいね」
武藤さん「じゃあ、ちょっと傘を取りに教室まで戻ってきます!」
日向さん「いってらっしゃい! …あれ? 私の荷物、なんだか軽いような。あ、私も日本心理学普及協会のテキストを教室に置き忘れたかも…」
|
今回の学び 傘を置き忘れてしまうのは、性格のせいではなく脳の「ワーキングメモリ」の容量オーバーによる自然な現象です。 「覚えておこう」と自分の記憶力に頼るのではなく、傘と荷物を物理的に結びつけるなど、脳に負担をかけない「忘れない仕組みづくり」を取り入れてみましょう。 |
日本心理学普及協会メールマガジン
次の記事へ→



